ニコタマテラス

 

「緑の谷を抱える10軒長屋」
二子玉川より砧方面へと続く国分寺崖線の坂の中腹に位置するコーポラティブハウスである。かつて渓谷であっただろう「まむし沢」と呼ばれる坂道に面する敷地は、崖線の条例にも守られ、武蔵野大地の自生種に囲まれた山中のような緑豊かな場所であった。敷地内にも高低差を解消するための大きな擁壁があり、周辺の高低差を活かしつつ、この擁壁と建物をどのように対峙させるかをテーマとした。瀬田玉川神社を頂上に東から西へと下っていく崖線の緑の景色の軸と、北側隣地の借景から多摩川へと下っていく南北の景色の軸を活かした配置とするために建物は鈎型に配置した。擁壁との間にできる空間は山行中にであう「段(ぱっと開けた平らな場所)」のような場所となり、長屋通路を兼ねた住民のコモンスペース=緑の谷として計画した。地面のような土間と、ウッドチップでグランドカバーを行うことで自然の雰囲気を残している。住戸は1階+地階のメゾネットと、1階+2階のメゾネットで構成されている。地下と2階は1.5層の階高(天井高さ3.5M~4.0M)のトンネル状のスケルトンとし、2階では大開口で緑の景色とつながる空間、地階では敷地内の高低差を利用することで庭と繋がる空間となっている。住戸毎に自由設計のコーポラティブハウスなので、ロフトを組み込んで使ったり、そのまままの大きな天井高さを楽しんだりと、立体的で変化に富む豊かな住戸空間となっている。緑の谷や屋上の植栽は武蔵野台地の緑の景色を形成する自生種を植栽した。将来的には瀬田玉川神社の木々のように大きくなり、国分寺崖線の原生の景色継承する森の中の住まいとなることを願う


ニコタマテラス

設計・スケルトン監理:奥野公章建築設計室 担当 / 奥野公章、田井昭裕
インフィル監理   :奥野公章建築設計室 担当 / 奥野公章、田井昭裕、飯島明
インフィル監理   :入江剛史建築設計事務所 担当 / 入江剛史
インフィル監理補佐 :奥野公章建築設計室 担当 / 若林寛和
構造        :小西泰孝建築構造設計 担当 / 小西泰孝、朝光拓也、佐藤隼平
設備        :長谷川設備計画 担当 / 長谷川博
施工        :東京組
外構・植栽     :イケガミ
企画・プロデュース  :アーキネット 担当 / 織山和久、平岡義朗

所在地       :東京都世田谷区
主要用途      :長屋
敷地面積      :724.72㎡
建築面積      :289.05㎡
延床面積      :792.89㎡
規模        :鉄筋コンクリート造 地下1階地上2階建て+塔屋
撮影        :中山保寛写真事務所 中山保寛
竣工        :2020年


✳︎受賞_「第49回東京建築賞」共同住宅部門奨励賞
✳︎掲載_「新建築」2020年8月号
✳︎掲載_「JIA建築年鑑2021-2022」