「場の継承 -庭とともに住継がれる家- 」 施主は地主としてこの地に住む家系の3代目の当主。土地を受継ぎ、敷地内で家を建て直し住継いできた先祖と同じく、この場所に住継いでいくことを望まれた。「庭」という環境を中心に同じ敷地内で新たな家を再構築していく試みで、建物の継承とは異なるかたちの「場の(環境)の継承」を目指した住宅である。今回の建替えでは、施主が幼少期を過ごした、茅葺き屋根の住宅 (祖父の代)の記憶と、配置を頼りに、代々受け継いできた庭と建物の良い関係を復活させようと考えた。庭との距離をつなげる要素として祖父の家にあった縁側空間を継承し、建物を囲うようL型の2層分のテラスユニットとして再構築した。このテラスユニットは、西向きの庭に対する太陽光を制御する装置としての役割ももつ。庭との連続感を高めるため、建物の北西と、南東の一部に耐力壁を集中させ、庭に面するファサードは9割を開口とした。開口は、1間ピッチに立つ柱に合わせFIX窓と木製サッシュの片引戸を組み合わせている。ディテールを消し庭との連続性を損なわないよう丁寧に設計した。祖父の茅葺の家の記憶を思い起こしながら新たな生活がはじまっている。
和光の家
建築 :奥野公章建築設計室 担当 / 奥野公章、小柳綾 構造 :我伊野構造設計室 担当 / 我伊野威之 施工 :深野建設
所在地 :埼玉県和光市 主要用途:専用住宅 敷地面積:482.56㎡ 建築面積:140.1㎡ 延床面積:182.56㎡(1階118.21㎡/2階64.35㎡) 規模 :木造 2階建て(一部 鉄骨造) 撮影 :牛尾幹太 竣工 :2017年